コラム

公共事業と立ち退き、世田谷一家殺害事件を思う

堺市内では、いくつもの公共事業が進められています。

公共事業は市民のための事業なので、必要なことですし、広い目で見るととても良いことです。
ですが、公共事業の立ち退きによって、不本意にも、土地や家を手放さないといけない人もいます。

ここでは、
公共事業による立ち退きのエリアに気を付けてくださいという話、
堺市内で実際に立ち退きが進んでいるあるエリアのこと、
それを私が残念に感じていること、
そして、立ち退きと言えば思いを馳せざるを得ない「世田谷一家殺害事件」のことを書きたいと思います。

立ち退き:用地取得・土地収用

冒頭でも触れましたが、堺市内では、いくつもの公共事業が進められています。
そして、公共事業によって市民の土地が必要になる場合、該当する市民は「立ち退き」をする必要があります。

公共事業とは、
道路が広くなって歩道が整備され、混雑が緩和したり、安全性が向上されたり、
くねくねと入り組んでいた道が見通しの良い碁盤の目のように整備されたり、
公園が新しく整備されて憩いの場が増えたり、
というものをイメージしてください。

市民のための公共事業ですが、その事業を進めるためには「用地取得」という形で、公共事業に必要な土地を市が市民から取得します。(市民が立ち退いて、市に土地を渡します)

もちろん、市が市民の土地を取得するには、
適正な価格(地価公示価格・基準値価格・相続税路線価・取引事例及び不動産鑑定士による鑑定評価額等を参考にした価格)で市が買い取り、
さらに、
移転等にかかる費用について、国で定めた公共用地の取得に伴う損失補償基準等で算出した価格によって補償されます。

立ち退きのエリアの物件を購入しないようにするために

立ち退きのエリアの物件を購入しないためには、不動産の購入前に行われる「重要事項説明」をしっかりと確認することです。

売買する不動産が、土地収用法の対象になっている場合、不動産会社は「重要事項説明」で説明しなければなりませんので、必ず不動産会社から説明を受けることができます。

堺市で立ち退きが進められているところ

道路整備や区画整理など、堺市ではいくつかの地域で立ち退きが行われています。

道路沿い以外では、例えば、大仙公園のすぐそばのエリアが立ち退きの対象になっています。

大仙公園の周辺では、百舌鳥駅のロータリー整備や、道路の拡幅の事業もありますが、公園を広げる事業でも立ち退きが行われています。

大仙公園の公園整備の事業は、1947年、第二次世界大戦の戦災復興の目的で、百舌鳥古墳群の周辺の大仙公園が「都市計画決定区域」に指定されました。

しかし、現在になっても、当時に指定された区域の全てが大仙公園として完成しておらず、指定区域の中には民家が多数あります。

数年前には、堺市は、また新たに一部エリアに用地取得のための立ち退きを通知しました。

大仙公園に隣接する住居専用地域で、風致地区にもなっている、とても良好な住環境のエリアです。

JR阪和線百舌鳥駅まで徒歩数分で、近くにはスーパーやコンビニ等もあり、大仙公園の中にあるカフェや図書館、博物館などの施設にも近い、利便性も文化性も高いエリアです。
線路のすぐそばのエリアですが、線路とエリアの間の古墳の木々が吸音するのか、住宅地に入ると電車の音もほとんど気になりません。

立ち退きさえ無ければ、堺市内でも特に魅力的で素晴らしい住環境のエリアだったので、私は残念に思っています。

堺市内にこういう条件のエリアは他にはありませんでした。

百舌鳥駅のロータリーや道路の整備は必要だと思います。
ですが、公園事業については、計画が作られていたからと言って、1947年という数十年前の計画を実行しなくてもよかったんじゃないかと今も感じています。
もちろん、市民から取得した用地をどんな公園にするかの検討や計画は、今の時代に沿った内容なのでしょうが。
個人的には、大仙公園は今の広さで十分だとも思います。

公園の整備事業と、世田谷一家殺害事件

先ほど、立ち退きのエリアの例として、公園の整備事業によって立ち退きになっている大仙公園の周辺エリアを挙げました。

紹介した理由としては、この事業は残念に思ってるから、というのもありますが、
立ち退きが進むにつれて更地がどんどん増え、残っている家が少なくなる様子を見ていると、
思いを馳せずにはいられない事件があるからです。

2000年12月30日に世田谷で起きた「世田谷一家殺害事件」。

一定の年齢以上の方は、この残忍な事件を忘れていないと思います。
今も犯人は逮捕されず、未解決のままです。

これほどの事件なのに、目撃情報などを十分に得られなかった理由を、私は社会人になってまちづくりに関わるようになってから知りました。

被害者の宮澤さんご一家のお宅の周辺は、住宅地を公園に整備する事業が進められていたのです。
当時、近隣の家はほとんど立ち退きを済ませ、周囲は閑散としていたそうです。

大仙公園のそばの立ち退きのエリアも、通るたびに、家は無くなり更地が増えています。

ですが、風が強い時も、道に散ってるはずの葉っぱが綺麗に掃除されている様子を見ると、残っているお宅の皆さんが、更地になってしまった「かつてのご近所さん」の前の道も、お掃除されているんだろうなと思います。

今後さらに家は減って行くでしょう。

ですが、最後の方が引越しされる時まで、少しでも安心して暮らすことができて且つ管理が負担にならないように、できるならば、用地取得を進める堺市にはしっかりと住民さんをサポートしてほしいと思っています。