コラム

土地の歴史がわかる!堺の地名の由来【中区編】

地名の由来を調べてみると、その土地や地域の歴史、風土が見えてきます。
堺市では、地形、人名、伝説、いろいろな物から付けられた地名が今もたくさん使われています。
なかには、当初の漢字から転じて別の漢字に置き換えられたところも。
コラムでは堺市内の地名の由来を区別にご紹介していきますが、こちらは中区編です。

他の区の地名由来のページは、こちらのリンクからどうぞ。
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昔の中区

現在の中区にあたる地域には、奈良時代の高僧、行基(ぎょうき)にゆかりのある地名が数多くあります。
行基は堺市西区の家原寺(えばらじ)で生まれました。
15才で出家し、一生を民間布教と社会事業にささげたと言われています。
具体的には、東大寺の大仏を造立の尽力した他、関西各地の道路や橋を造るなど多くの土木工事を行いました。
日本の国づくりの基礎になるインフラ整備や治水に取り組んだ人物として知られています。

土地の歴史がわかる!地名の由来【中区編】

八田(はんだ)

行基の母は、蜂田古爾比売(はちたのこにひめ)といいました。
この蜂田首(はちたのおびと)という一族が、この辺りに住んでいたといわれています。
蜂田氏の祖先をまつっているのが、「お鈴の宮」と呼ばれている八田寺(はんだいじ)町の「蜂田神社」です。
行基が建てたといわれる蜂田寺(華林寺)も、鈴の宮の近くにあります。
蜂田がなまって八田と呼ばれるようになったといわれています。

深井(ふかい)

行基がこの地に深い井戸を掘り、人々の生活が豊かになったことから、「ふかい」と呼ばれるようになったと言われています。
古代は「ふかい」に「常凌」という字が当てられていましたが、中世には「深井」となりました。
ちなみに行基の掘った井戸は、単に飲む水だけでなく、どんな病気にもよく効くといわれ人々から大変ありがたがられました。
その井戸は、善福寺(深井清水町)の裏の井戸であるとも、深井中町の外山家の井戸であるともいわれていますが、現在では、残念ながら両方とも埋められています。

土師(はぜ)

現在の土師町の周辺には、日本で7番目に大きいニサンザイ古墳をはじめ、多数の古墳があります。
畿内(朝廷の周辺:奈良県全域、京都府南部、大阪府のほぼ全域、兵庫県南東部)の古墳造りに関わった土師氏の一部は、土師郷を本貫地としており、土師町という地名の由来と考えられています。

土塔(どとう)

行基は一生の間に49のお寺を建てたといわれています。
その一つに土塔町の大野寺があり、国の史跡になっている仏塔(土塔)があります。
塔といえば、五重の塔などをすぐ思い浮かべますが、塔はもともと仏教を広めた釈迦(しゃか)の骨を埋めたお墓(ストゥーパ)です。
仏教が中国に伝わったとき、このインドのストゥーパを漢字で卒塔婆(そとうば)と訳しました。
これが「塔婆」となり「塔」とだんだん簡単に呼ばれるようになりました。
さて、大野寺跡の土塔は、土のブロックを13層に積み上げた、ピラミッド形の大変珍しいもので、少なくとも国内では例がないといいます。
この珍しい土塔が地名になりました。

陶器(とうき)

陶器を多く造っていたことを由来としています。
「和泉名所図会」にも「陶器荘。~中略~ むかしは此地にて陶器(すえもの)を多く作り出すゆへ、名とす」と記述されています。
陶器周辺から南区高倉台にかけてを中心に「日本書紀」の「ちぬの県の陶邑(すえむら)」があったとされ、泉北ニュータウンの造成では、500基以上の須恵器や窯跡が確認されました。

久世(くぜ)

久世は学校の名前に残っています。この周辺は、和泉木綿の綿の産地として知られる久世村という村でした。
村名は江戸時代に関宿藩領であったことから、関宿藩主久世氏の久世を由来としています。
久世村は、大半が現在の堺市中区の一部にあたりますが、南区の和田、和田東、宮山台などにも及ぶ広さの村でした。

久世村は、日本の第42代内閣総理大臣の鈴木貫太郎(1868-1948)の出身地でもあります。
1936年の二・二六事件で4発撃たれて重傷を負った際には、多治速比売女が枕元に立って命を救ってくれたこのことで、本復祝として多治速比売神社(堺市南区宮山台)を参拝しました。
その後、1945年4月に昭和天皇からの厚い信頼をもって内閣総理大臣に就任した鈴木貫太郎は、陸軍の反対を押し切ってポツダム宣言を受諾するなど、第二次世界大戦を終戦へと導き、日本の歴史における大きな功績を残しました。

宮園町(みやぞのちょう)

蜂田神社と野々宮神社の由緒ある両神社の間にある田園ということで戦後に名付けられました。

大野芝(おおのしば)

このあたり一帯が、古くより「大野ヶ原」「大野新田」と呼ばれていたことによります。


参考資料:堺市サイトhttps://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/jutaku/jutaku/jukyohyoji/chimeiyurai.html
大阪府教育委員会宮園遺跡Ⅱ
堀田暁生編「大阪の地名由来辞典」※

堀田暁生編「大阪の地名由来辞典」について

堀田暁生編「大阪の地名由来辞典」(東京堂出版)は、大阪府内の地名の由来を記した本です。
当ページでは、こちらの本も参考にさせていただきました。
由来だけなく、地名の変遷や、どんなところだったのか、昔の文書でどのように書かれていたか等、とても詳しく紹介されています。
現存する地名だけでなく、今は無き地名もピックアップされています。
堺だけでなく府内全域の地名をまとめたこの本は、とにかくとても面白いので、地名や変遷に興味がある方にはオススメの1冊です。

大阪の地名由来辞典 [ 堀田暁生 ]